変形性股関節症で「大腿骨頭が前方へ偏位して固まっている」状態に対する整体的な治療法について、臨床的・実践的な視点からご案内いたします。
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🔍まず前提として:
変形性股関節症は進行性の疾患で、軟骨のすり減り → 関節裂隙の狭小化 → 骨頭や臼蓋の変形と進んでいきます。
ここで「大腿骨頭が前方へ偏位し、固定(拘縮)されている」というのは、
• 関節包・靭帯・筋膜の短縮や癒着
• 骨盤の後傾・寛骨の外旋
などが背景にあることが多く、骨格的な配列と筋肉のバランスの崩れが深く関係しています。
大腿骨頭が前にズレる=少し内側にねじれてズレることが多い
(=内旋+前方偏位)
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🧠 なぜ「内旋」するの?
1. 股関節の前側の筋肉(腸腰筋など)が硬くなると、前へ引っ張る力が強くなる。
2. お尻の筋肉(特に外旋筋群・中殿筋)が弱くなると、内側へ回りやすくなる。
3. その結果、大腿骨頭が前に+内側にズレやすくなる=内旋+前方偏位。
状態 傾向
股関節前方偏位 ✅ 大腿骨頭が内旋+前方へズレてることが多い
対策 ✅ 外旋筋の活性化(外にねじる力)✅ 骨盤前傾・寛骨内旋へ矯正
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✅ 整体的な治療の柱(目的別)
① 骨盤のニュートラル化(後傾改善)
前方偏位の背景に、骨盤の後傾・寛骨の外旋があることが多いです。
アプローチ:
• 腸骨筋・腸腰筋のエキセントリックストレッチ、股関節内旋筋エキセントリック
- L4矯正、外旋筋群筋トレ
• 殿筋群の緊張緩和(中殿筋・梨状筋)、仙腸関節の動きの調整、股関節内外旋ほぐし
• ASISとPSISの高さバランス確認・修正⸻
② 股関節包・靭帯のリリース(可動性の確保)
アプローチ:
• 大腿骨頭前方の関節包ストレッチ
• 内転筋群のトリガーポイントリリース
• 内旋位固定があれば、外旋筋群の活性化(深層六筋など)
• 関節モビライゼーション(軽度な牽引や内旋・外旋の誘導)※強い拘縮がある場合は、無理な牽引や関節操作は禁忌です。
PNF的アプローチ(拮抗筋収縮 → 弛緩)を用いると効果的。⸻
③ 下肢全体の連動調整(運動連鎖の改善)
アプローチ:
• 膝関節・足関節の可動性を高める(特に距腿関節の背屈)
• 股関節の負担を膝・足へ分散させる施術
• 歩行時の過剰な骨頭前方滑りを防ぐ動きの指導
⸻④ 姿勢指導・セルフケア
アプローチ:
• 椅子の座り方(深く座る・股関節屈曲90度以上にしない)
• 仰向け・腹臥位での股関節ゆらし運動(リズム運動) - フロントランジ(小さい可動域)による腸腰筋活性
- 温熱療法:内股・鼡径部の温熱で滑走性を上げる
1. 腸腰筋の適切な収縮とリリース
• 歩幅を大きくしすぎない:股関節屈曲は約30°~40°に抑え、杖立ちを意識。
• 「高い膝をゆっくり上げる」動作(ハイニーマーチ)を通じて腸腰筋を収縮させ、股関節前方への引き込みを促進します。腸腰筋を強く使うことで、大腿骨頭が前に逃げにくくなります 。
🦵 動画の主な内容(わかりやすく解説)
1. 中殿筋に効く「横に足を開く運動」(ヒップアブダクション)
→ 横方向に足を開くことで、股関節の安定に不可欠な中殿筋を鍛えます。
- クラムシェル(貝殻のように足を開く)
→ 横向きで、曲げた膝を上下に動かすことで、大殿筋と中殿筋をバランスよく強化。 - ミニスクワット+側方ストライド
→ 膝を軽く曲げた状態で片足をサイドに踏み出す動作。安定しながら使いやすい腸腰筋と殿筋を連動。 - 橋ポーズ(グルートブリッジ)
→ 仰向けで腰を持ち上げることで、大殿筋を中心に後面の筋肉を鍛えていきます。3. 体幹・骨盤の安定化
• **ドローイン(お腹を軽く引き締める)+殿筋の収縮(橋のポーズ)**で、骨盤をニュートラルに保持。これにより、歩行時の無駄な骨頭滑りを抑えます 。
• 背筋を伸ばし、姿勢を整えたままの歩きを練習するのがポイント。4. 歩行中のリズム・イメージ指導
• 🎧 「踵を着けたらすぐに足を引き上げて、背後に押し出す」を意識的に。
• 「膝をまっすぐ前へ引く」+「後ろに伸ばす」動作がスムーズに連携することで、骨頭が安定します。🎯 動画のポイント(小学生にもわかるように)
1. 踵(かかと)から地面につくように歩く
→ 「コツン」と踵が最初に当たるイメージで歩こうね。
2. かかとが地面についたら、すぐに膝を引き上げる!
→ 「カツカツ、ヒップ!」というリズムを意識!
3. 足を後ろに伸ばして、地面を“背後に押し出す”
→ 「ペチッ」とお尻を後ろに押す感じ。
4. かかと→膝上げ→お尻押し出し、これらがつながると股関節が安定するよ!歩行時のフェーズ別リズムと股関節の意識(患側・健側で分けて)
フェーズ | 健側(問題なし) | 患側(股関節に変形あり) | ポイント・意識 |
① 踵で着地(ヒールストライク) | しっかり踵で着地してOK。 | 着地時間を短く、軽く当てるように接地。 | 長く体重を乗せすぎない。 |
② 足を引き上げる(膝を前へ) | 股関節屈曲を使ってしっかり膝を前へ引く。 | 腸腰筋を使って素早く軽く引き上げる(屈曲角度30~40°で十分)。 | 患側は深く引き上げすぎない。 |
③ 足を背後に押し出す(プッシュオフ) | お尻と太もも裏(ハムスト)でしっかり後方へ蹴る。 | プッシュオフは無理にしない。軽く引き抜くだけでOK。 | 患側は推進力より、滑らかな引き抜きが優先。 |
④ 支持脚になる(片脚立ち) | 健側は患側のスイングを支える役目。中殿筋で骨盤安定を。 | – | 健側でしっかり体を支えられると、患側に負担がかからない。 |
📌 補足アドバイス
• 初期は 患側を”引きずる”のではなく、
• 健側でしっかり支持→患側はリズム良く引き出すの流れが大切です。
✅ 練習フロー(一連の流れ)
ステップ 動き・内容
① 高膝歩行(ハイニー) 15歩×2セット:腸腰筋の収縮を意識
② 股関節伸展運動 壁支えで後ろ脚を伸ばす10回×両側
③ 橋ポーズ(ブリッジ) 仰向けで10秒ホールド×5回
④ ドローイン 立位で腹圧を軽く引き締めながら10秒×5回
⑤ 歩行練習 壁や杖なしでゆっくり5m×往復2回、意識して歩きましょう
股関節の前方偏位(=大腿骨頭が前方にずれる状態)に関連して弱化しやすい筋肉は、次の通りです:
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✅ 【5】東洋医学的アプローチ(間接)
● 小脳の働き ⇔「腎」「肝」「脾」の関連(中医学解釈)
• 小脳=精密運動・平衡感覚の制御
• 中医学では「肝(筋の運動・血)」「腎(骨・脳)」「脾(バランス)」の連動が重要
• アプローチ経絡:肝経・腎経・脾経・督脈
● 頭部ツボ刺激
• 百会(GV20)、脳戸(GV17)、風池(GB20)など、脳幹~小脳周辺の血流・気の通りを促す